-
高齢になると、むし歯や歯周病の進行で自分の歯を保つのが難しくなってきます。
厚生労働省の『令和4年歯科疾患実態調査結果』によると、45~54歳では1人平均1.4本、55~64歳では3.0本、65~75歳では6.0本、75~84歳では11.2本、85歳以上では14.1本、歯を失っています。失われた歯の代わりとして入れ歯を作り、その入れ歯とともに健康で快適な“健口ライフ”を送るためには、入れ歯のお手入れは欠かせません。
入れ歯はお手入れ次第で使用できる年数が大きく変わってきます。また、残っている歯やお口の粘膜のケアも忘れてはいけません。今号では、大切な「入れ歯のお手入れ」についてご紹介します。
お手入れのとき以外、朝起きてから夜寝るときまで、基本的には入れ歯はいつもお口の中に入れておくのが望ましいです。
入れ歯は食事をするためだけでなく、会話をしたり身体のバランスを保つうえでも大切な役割を担っています。また、介護を必要とする多数歯欠損の高齢者の方が入れ歯を装着することによって、口から食事をとることだけでなく、リハビリの面からもADL(日常生活動作)の向上に大きな効果があることがわかっています。
入れ歯の種類によってお手入れの方法は異なりますが、一般的なお手入れ方法をご紹介します。
基本的には、入れ歯を作成したかかりつけの歯科医院での説明・指導に従ってお手入れをおこなってください。
部分入れ歯も総入れ歯も必ず外してから専用のブラシで洗浄しましょう。
落としても紛失や破損をしないように、流水下に洗面器を置いて洗浄するようにしてください。部分入れ歯の場合、クラスプ(バネ)の部分は汚れが残りやすいので小さいブラシを使ってていねいに磨きましょう。
*市販のハミガキ粉には研磨剤が入っているものが多いため、入れ歯の洗浄には使用しないでください。
また、力を入れ過ぎるとクラスプの変形やキズの原因になってしまうので、軽い力で磨きましょう。
ブラッシングだけでは落としきれない汚れや細菌を除去し、繁殖を抑えるためにも2~3日に一度は入れ歯洗浄剤を使用することをおすすめします。
洗浄剤に漬けた後は入れ歯を流水できちんと洗浄し、洗浄液をきれいに洗い流しましょう。*入れ歯の素材によっては熱湯で変形してしまう場合もあるため、ぬるま湯で洗浄するようにしてください。
入れ歯は直射日光や乾燥に弱いので、きれいに洗浄した後は清潔な水や入れ歯洗浄剤の入った専用のケースに入れて保管してください。*衛生のため保管用の水や洗浄液は毎日取り換えるようにしましょう。
認知症がある方は、既定の場所に保管するか、ご家族の方が管理するようにしてください。
入れ歯を装着していると、クラスプのかかっている歯や残っている歯が、むし歯や歯周病になりやすくなります。
また、噛むことで入れ歯が微妙に動き、お口の中の粘膜面をこすって刺激します。お口の中も清潔にしないと口内炎などもできやすくなってしまいます。*介護が必要でなかなか自分では歯磨きができない人でも、ブクブクうがいでお口の中に付着していた食べカスや汚れを取り除くことができます。
お口の筋肉の運動にもなりリハビリ効果が期待できます。寝たきりの高齢者を介護される方は、口腔内も注意深く観察して粘膜にキズや腫れがないかをチェックしてください。
基本的に就寝するときは、小さな部分入れ歯の誤飲や細菌の繁殖を防ぐため、またあごや歯ぐきの骨・粘膜を休ませるためにも入れ歯を外すようにしましょう。
*入れ歯を外して寝ると、残っている歯が痛んで眠れないなど、問題のある方は歯科医師に相談しましょう。