2025/04/15号 災害時の口腔ケア

  • 災害時の口腔ケア今年に入って、地震調査委員会は南海トラフ地震発生確率が「30年以内に80%」へと引き上げることを公表しました。
    また、近年は温暖化による気候変動によって前例のない風水害も発生しています。

    今年の1月17日で阪神・淡路大震災からちょうど30年が経ちました。私たちは『記憶を次に伝え』そして、あらゆる災害に『備える』意識を常に持ち続けていかなければなりません。
    避難所生活や水不足になっても身体の健康を保つためにはどうしたらよいのか、今の備えをもう一度見直す機会にしてみてください。

  • 大切な口腔ケア

    阪神・淡路大震災では避難生活における災害関連疾患の問題が顕著化し、被災後に肺炎によって亡くなられた方が震災関連死の24.2%を占めていたとの調査結果があります。
    誤嚥を起こしやすい高齢者は水不足などで十分な歯みがきができないために、細菌の混じった唾液が肺に入って肺炎を引き起こしてしまうケースが多いのです。

    避難生活では、不規則な生活、栄養不良、ストレスで唾液が減るなど、平常時より口の中の衛生が保たれにくい状況になります。
    震災前にはむし歯がまったくなかった子どもたちの多くに、多発性のむし歯が確認されたという報告もされています。

    専門の口腔ケア

    その教訓から、東日本大震災や熊本地震では災害派遣医療チームに歯科医師や歯科衛生士が帯同し、高齢者を中心に口腔ケアや口腔衛生指導が行われるようになりました。
    避難所で蔓延しやすい風邪や感染症に対しても、口腔ケアによる予防効果が認められています。

  • 食べ方の工夫

    繊維質の食べ物を最後に食べるようにしましょう。例えば、食事がおにぎりとリンゴの場合は、リンゴを後に食べます。
    スポーツドリンクやクッキー等は、栄養を取るのには優れていますが、虫歯になりやすいものです。

    お勧めの食べる順番

    食べた後、水やお茶でゆすぐように一口飲みましょう。

  • 歯みがきの工夫

    <歯ブラシが手に入らない場合>

    ガーゼや綿棒、ティッシュペーパーなどで歯垢を拭いましょう。拭った後、あれば洗口剤やお茶でうがいをすると有効です。

    少量の水で歯みがき

    <最小限の水を使った歯磨き>

    *コップに水を50CC程入れます。
    *口の周りを水で濡らします。こうすることで口角や唇の切れを防ぎます。
    *歯ブラシをコップに入れて濡らします。
    *歯磨き剤は口を乾燥させますので、水が手に入りにくい時は使わなくても良いでしょう。貴重な水で2回ゆすぐ
    *歯磨きをしてコップの中で歯ブラシをゆすぎます。
    *コップの水を2回に分けて「ブクブクうがい」をします。多くの水で1回うがいするよりも、少ない水でも2回うがいした方が効果があります。

  • 入れ歯のケア

    人前で外すのが恥ずかしかったり、水が不足している等の理由で付けたままにされてしまう場合もあるようですが、1日1回は外して、清掃することが大切です。使い捨てのおしぼりや綿棒で拭うとよいでしょう。
    入れ歯は外したままにすると、口の中の形が変わり入れにくくなる場合もあります。また噛むことだけでなく、飲食物や唾液を飲み込むのにも入れ歯は役立ち、誤嚥を防ぐことにもなりますので通常通り使用されることをお勧めします。

  • 生活が落ち着いたら

    少量の水で歯みがき歯科の健診を受けましょう。気をつけていても歯石や小さなむし歯が出来ているかもしれません。
    早期に発見・治療することで、影響を最小限にすることができます。

  • 今から準備できること

    家族分の歯ブラシを非常用持ち出しバッグに入れておきましょう。
    水を使わないで歯みがきが出来るグッズも販売されています。防災グッズ売り場や、アウトドアグッズの売り場を探してみてください。

    非常持ち出しバッグを準備

    ご家庭で災害時の備えを見直すときには、お口の健康を保つための準備も忘れずに!